消費税と社会保障(年金)
先日、「軽減税率に対応したレジ・システムの説明会が行われた」というニュースがテレビで報道されていました。今年、令和元年の10月から予定されている消費税率の10%(消費税7.8%、地方消費税2.2%)への引き上げに伴って導入される「消費税軽減税率制度」に対応した事業者への説明会で、軽減税率8%の対象となる品目とそうでない品目を自動的に分けて消費税を計算し領収書(レシート)を発行する機種の説明と、軽減税率実施前のシステムの早期導入を促す説明会だったようです。
平成27年(2015年)、平成29年(2017年)と2度延期された消費税率の引き上げが今年の10月から予定されているわけですが、ここで、平成とともに始まった消費税の導入背景・目的などをあらためて振り返ってみますと、①財政赤字の状態を悪化させずに、少子高齢化に伴って増加する国の出費を賄うだけの財源を新しく確保する必要がある。②財源を所得税と法人税に頼っていると現役世代ばかりに負担をかけることになる。③既に存在していた間接税(酒税・たばこ税・自動車重量税など)の仕組みに限界がある。といった諸事情で消費税が導入されたわけです。
一方、消費税収の使用目的は、平成元年(1989年)に3%の税率でスタートした当初は「財政再建」などのためとなっていましたが、8年後の平成9年(1997年)には「福祉を充実させる」ことを目的に5%の税率に引き上げられました。この、「福祉を充実させる」の中には「子ども・子育て支援」は、まだ具体的には表明されていませんでした。その後、平成24年(2012年)に実施された「社会保障と税の一体改革」により、消費税増税分は全額社会保障(年金、医療、介護、子ども・子育て支援)に充てることを目的として、平成26年(2014年)に現行の8%へと税率が引き上げられました。
このように、消費税は少子高齢化に伴う社会保障の諸施策の重要な財源となっているわけですが、身近なところでは国民年金(老齢基礎年金)への2分の1の国庫負担が挙げられます。この、老齢基礎年金の2分の1の国庫負担は平成21年(2009年)度からです。それまでの国庫負担は3分の1でしたが、2分の1への引き上げに必要な財源は、今では消費税を8%へ増税した分の一部で賄われています。
国民年金は日本に居住する20歳から59歳までの全ての人が加入しなければならない年金制度ですが、収入が少なくて国民年金保険料(2019年度は月額16,410円)の納付が厳しい場合、収入に応じて①全額免除②4分の3免除③半額免除④4分の1免除といった4段階の保険料免除制度(法定免除と申請免除)があります。この保険料を免除された期間については、保険料免除割合と国庫負担をもとに決まる老齢基礎年金を受給することになります。
例えば、20歳から59歳までの40年間保険料を納付した場合の老齢基礎年金は780,100円(2019年度)ですが、仮に、40年間の全てが保険料全額免除期間だったとしますと、前述のとおり国庫負担が2分の1*ありますので、受給できる老齢基礎年金は780,100円の2分の1の390,050円*の年金ということになります。また、保険料半額免除の場合は、2分の1の国庫負担分390,050円と保険料半額負担分の195,025円(390,050円の2分の1)の合計で585,075円*となります。
*平成21年(2009年)3月分までの国庫負担は3分の1だったため、現在は、国庫負担3分の1の期間と 2分の1の期間でそれぞれ分けて計算され、合算された金額となります。
このように、国民年金は収入が少なくて保険料の負担が厳しい人でも、手続き(住所地の市区町村に届出・申請)をすれば消費税といった税金で賄われている国庫負担分の年金が受け取れるしくみになっています。