公益財団法人 生命保険文化センター

メニュー
閉じる

公益財団法人 生命保険文化センター

X youtube
ESSAY エッセイ
その他

消費税と社会保障 (待機児童の解消)

社会保険労務士 ファイナンシャル・プランナー(CFP) 田村 三雄

先月(令和元年10月)から引き上げられた消費税が「待機児童の解消」にも充てられています。すでに、消費税率引き上げ分を財源とした「幼児教育の無償化」がスタートしていますが、待機児童についてもその解消が急がれています。

「保育所に入りたくても、保育所に入ることができない」児童、入所待ちをしている児童が待機児童と呼ばれていますが、1971年(昭和46年)~1974年(昭和49年)の第二次ベビーブームを受けた保育所不足のときには「保留児」と呼ばれていました。

「待機児童」という言葉は、1994年(平成6年)に策定された「エンゼルプラン」*1や1999年(平成11年)策定の「新エンゼルプラン」*2など、保育所等の受け入れ児童数を増やすといった諸施策の流れを引き継ぎ、2001年(平成13年)に新たに「待機児童ゼロ作戦」*3がスタートしたときから広く社会に認識されるようになったそうです。

*1 文部・厚生・労働・建設省の4大臣の合意により、少子化の一層の進行や女性の社会進出などの変化に対応するため「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について(エンゼルプラン)」が策定されました。

*2 大蔵・文部・厚生・労働・建設・自治の6大臣の合意により、少子化対策推進基本方針に基づいて、低年齢児の受け入れ枠の拡大、延長・休日保育の推進等、具体的実施計画を定めた「新エンゼルプラン」が策定されました。

*3 待機児童ゼロ作戦は、閣議決定により、保育所、保育ママ、幼稚園の預かり保育などを活用して、受け入れ児童数を15万人増やすことで待機児童の解消を目指すとしたものです。

待機児童問題は、①共働き世帯の増加や女性の社会進出が進んだことによる就業率の高まり*4、②核家族化によって、日中祖父母に預けることが難しい家庭の増加*5、③保育士の確保が追いつかない(保育士不足)*6④、都市部に児童が集中しているが、都市部は保育所を作りにくい環境にある、といったような複雑な問題を抱え、現在も大きな社会問題となっています。

*4 女性の就業率(15歳~64歳の人口に占める就業者の割合)は,2009年(平成21年)の59.8%から2018年(平成30年)に69.6%となっています。(総務省「平成30年労働力調査」より)

*5 2017年(平成29年)の児童のいる世帯は1,173万4千世帯(全世帯の23.3%)で、児童のいる世帯の内、核家族世帯は969万8千世帯(児童のいる世帯の82.6%)となっています。(厚生労働省「平成29年国民生活基礎調査」より)

*6 保育士の資格を保有しながら保育所への就職を望まない主な理由として①責任の重さ・事故への不安②給料が低い③保護者との関係がむずかしい、といったことが挙げられています。

待機児童の解消には、認可保育所の規制*7緩和や無認可保育所への支援が必要といった声もあるようですが、現在は、2016年(平成28年)に「ニッポン一億総活躍プラン」の一環として閣議決定された「子育て安心プラン」に基づいて、遅くても2020年度(令和2年度)末までに全国の待機児童を解消し、2022年度(令和4年度)末までに、女性の就業率80%に対応できるように約32万人分の受け皿を整備する計画や保育士の確保に取り組む計画が打ち出されています(その後、約32万人分の受け皿整備は2020(令和2)年度末までに前倒しが決まっています)。

*7 現在、認可保育所は国が定めた「施設の面積、保育士等の職員数、保育室の設備、給食設備、防災管理、衛生管理」などの設置基準を全てクリアして、都道府県知事の認可を受ける必要があります。

プロフィール

田村 三雄

田村 三雄(たむら みつお)

社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー。田村社労士・FP事務所代表。
官公庁・労組等での年金制度を中心とした講演や企業での労務相談、
ライフプランセミナーの講師、執筆活動などを行っている。
趣味は映画観賞と散歩。