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ESSAY エッセイ
その他

消費税と社会保障 (高等教育の無償化)

社会保険労務士 ファイナンシャル・プランナー(CFP) 田村 三雄

寒さも厳しくなり、受験シーズン到来となりましたが、間近に受験を控えているご家庭も少なくないのではないでしょうか。令和元年10月からの消費税率引き上げにより、大学や高等専門学校等*1の高等教育の無償化(高等教育の修学支援新制度)が令和2年4月からスタートします。

*1修学の支援に関する法律第7条第2項に定める要件(人間性を備えた創造的な人材を育成するために必要な基準を満たしているか、経営を継続的かつ安定的に行えるかなど)を満たしていることの確認を、文部科学大臣等から受けた「大学、短期大学、高等専門学校、専門学校」が対象となります。

意欲ある子供たちの修学を支援するため、「授業料や入学金の減免制度の創設と、返還を要しない給付型奨学金を大幅に拡充する」というものです。高等教育の無償化と聞きますと、教育費が全額無償になると感じますが、修学を支援する制度ということで全額無償にはなっていません。

支援の対象は、①家計の経済状況(所得*2と保有資産額*3)と、②学業成績・学修意欲*4などで認定された学生となっています(原則1年ごとに認定されます)。ただし、高校を初めて卒業(高卒認定試験の場合は合格)した年度末から2年(認定審査期間)を経過して大学や高等専門学校等*1に入学する場合は、支援対象者とならなくなります。また、在学中に退学・停学(3か月以上)の処分を受けた場合は、それまでの支援金の返還が求められます。

*2 「市町村民税の所得割の計算に使用される課税標準額×6%-(調整控除の額+税額調整額)」で算出された額(生計維持者と学生等の合計額)が100円未満の場合は「住民税非課税世帯(第Ⅰ区分)」、100円以上25,600円未満の場合は「住民税非課税世帯に準じる世帯(第Ⅱ区分)」、25,600円以上 51,300円未満の場合は「住民税非課税世帯に準ずる世帯(第Ⅲ区分)」となっています。政令指定都市の場合、(調整控除の額+税額調整額)3/4を乗じた金額となります。

*3 対象となる保有資産は、現金およびこれに準ずるもの、預貯金、有価証券の合計額(不動産は対象外)で、生計維持者が1人の場合は1,250万円未満、生計維持者が2人の場合は2,000万円未満が基準額となっています。

*4 入学前年度(高校3年生)は進路指導などによる「学修意欲」、入学年は入学試験の成績(上位1/2以上)、高校の評定平均値(3.5以上)、在学中は学業成績(平均成績上位1/2以上)、修得単位数の標準単位数以上、学習計画書による学修の意欲・目的・将来の人生設計等の確認などの認定基準があります。

入学金や授業料などの減免を受けられる限度額は、①大学か高等専門学校等か*1、②国公立か私立か、③住民税非課税世帯かそれに準ずる世帯かの、①~③によって異なっています。例えば、一回限り支給される入学金の最大減免上限額は282,000円(国公立大学)で、一番少ない減免上限額は70,000円(国公立専門学校)となっています。授業料の最大減免上限額は年額700,000円(私立大学・私立高専)で、一番少ない減免上限額は年額166,800円(国公立専門学校)となっています。

また、返還を要しない「給付型奨学金」の給付額は、①大学か高等専門学校等か*1、②住民税非課税世帯かそれに準ずる世帯か、③自宅通学か自宅外通学かによって異なっています。最大の給付額は、住民税非課税世帯(第Ⅰ区分)で自宅外から通学する私立の大学・短期大学・専門学校の学生で909,600円(年額)となっています。

なお、住民税非課税世帯に準ずる世帯*2の入学金や授業料の減免額、給付型奨学金の給付額は、第Ⅱ区分の世帯が第Ⅰ区分世帯の2/3、第Ⅲ区分の世帯が第Ⅰ区分世帯の1/3となっています。

プロフィール

田村 三雄

田村 三雄(たむら みつお)

社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー。田村社労士・FP事務所代表。
官公庁・労組等での年金制度を中心とした講演や企業での労務相談、
ライフプランセミナーの講師、執筆活動などを行っている。
趣味は映画観賞と散歩。