コロナ禍の中での確定申告
昨年初頭から始まったコロナ禍は依然として収束する状況にはありません。ワクチンの早期の実用化が待たれるところですが、海外では実用化の初期段階までこぎ着つけた国々もあり、期待したいところです。一方で、コロナ禍の拡大に伴い、様々な経済的な支援策が講じられました。確定申告を前に、主要な支援策や新しい生活様式に関連し、個人の所得税について、税務上の主な取扱いについてご紹介いたします。
1.事業所得が赤字となった場合
原則として、事業所得による赤字は、給与所得等の他の所得と損益通算します。そして、損益通算しても、なお赤字額(純損失額)が残る場合は、その赤字額を翌年以後3年間(2021(令和3)年から2023(令和5)年)にわたり繰り越して各年分の所得(黒字額)から控除することができます。これによって、翌年以後の所得税額等が軽減される効果があります。ただし、確定申告を青色申告で行っている方とそうでない方(白色申告の方)で取扱いが異なりますので注意が必要です。
(1)青色申告の方
損益通算後の赤字額の全額を繰り越すことができます。
なお、損益通算後赤字(純損失額)が残る場合で、その前年(2019(令和元)年)も青色申告を行っている場合は、その赤字(純損失額)の全部または一部を前年(2019(令和元)年)の黒字額と相殺して、前年分(2019(令和元)年分)の所得税の還付を受けることもできます(純損失の繰り戻し)。なお、この、純損失の繰り戻しによる還付を受ける場合、その内容について税務署の調査(「税務調査」)が行われる可能性が高まると言われておりますので、翌年への繰り越しか、前年との繰り戻しかの選択の際には考慮に入れるとよいでしょう。
(2)青色申告でない方(白色申告の方)
損益通算後の赤字額のうち災害による損失等を繰り越すことができます。ただし、災害による損失等の額はある程度範囲が決められていますので注意してください。ポイントは、新型コロナウイルスの感染拡大等を防止するために緊急的に必要な費用か否かという点となります。
〔該当する例〕
- 飲食業者等の食材(棚卸資産)の廃棄損
- 感染者が確認されたことにより廃棄処分した器具備品等の除却損
- 施設や備品などを消毒するために支出した費用
- 感染発生の防止のため、配備するマスク、消毒液、空気洗浄機等の購入費用
- イベント等の中止により、廃棄せざるを得なくなった商品等の廃棄損
〔該当しない例〕
- 客足が減少したことによる売上げ減少額
- 休業期間中に支払う人件費
- イベント等の中止により支払うキャンセル料、会場借上料、備品レンタル料
2.国や県、市町村から支給された助成金等の取扱い
(1)非課税となるもの
対象者に一律1人あたり10万円が支給された「特別定額給付金」、コロナ禍で休業させられた労働者のうち、雇用主から休業手当等の支給がなかった方に支給された「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」、児童手当を受給する世帯に支給された「子育て世帯臨時特別給付金」などは非課税となります。
(2)課税されるもの
コロナ禍による売上減少を要件として給付された「持続化給付金」、「家賃支援給付金」、コロナウイルス感染拡大防止のため、各自治体の要請や協力要請に応じて営業時間の短縮に協力した事業者等へ支給された「休業要請協力金」は事業所得の収入金額となります。
また、従業員を一時的に休業等させ、休業手当を支給した場合に給付される「雇用調整助成金」、従業員の子どもが通う小学校等がコロナ禍により臨時休校した際に有休の休暇を取得させた場合に給付される「小学校休業等対応助成金」なども事業所得の収入金額となります。これらは、売上等と合算され、事業所得が黒字となれば課税されることとなります。
3.医療費控除の留意点
「マスクの購入費用」は医療費控除の対象となりません。ただし、個人事業主が事業のために購入したものは、事業の必要経費となります。
また「PCR検査費用」は、医師等の判断により受けたものは医療費控除の対象となりますが、ご自身の判断による受けたものは対象となりません。
使いみちが同じでも、状況により確定申告で控除等の可否が分かれますのでご注意ください。