副業の確定申告
コロナ禍を契機に、生活の安定のためやキャリアの幅を広げるためにサラリーマンでも副業を持つ方が増えているようです。
今回は、サラリーマンの方が副業の確定申告を行う場合の留意点をご紹介します。
1.確定申告が必要な方
年末調整を受けたサラリーマンの方は、副業による収入から経費を差し引いた所得(利益)や副業の給与額面が、年間20万円を超える場合のみ確定申告が必要です。20万円以下の場合は確定申告不要ですが、副業が複数ある方はすべてを合算した金額で判定します。また、医療費控除や寄附金控除(ふるさと納税など)を受けるため確定申告を行う場合は、20万円以下の所得(利益)も含めて確定申告することとなります。
2.代表的な留意点
(1)経費の範囲
副業の収入を得るために直接的に要した業務用の費用等が経費となります。ただし、業務用かプライベート用か明らかに区分できないものは経費として認められないので注意が必要です。あいまいなものは、資料をそろえて業務用であることを説明できるようにしておくことをお勧めします。また、業務用とプライベート用の使用割合を明確にする資料を準備し、費用を使用割合に応じて按分して経費とすることも認められます。
なお、経費として認められなかった事例として、弁護士の夫が税理士の妻に対して支払った顧問料や弁護士が支払った弁護士会会合後の懇親会の2次会費用などがあります。これらが経費と認められなかったことを意外に感じる方も多いと思いますが、経費の範囲につき厳しい判断となる可能性があることには留意しておいた方が良いでしょう。
(2)損益通算
副業が赤字の場合、一定の条件で給与所得等の他の所得とその赤字を相殺(「損益通算」)して合計の所得額を減らし、納税額を減らすことができます。ただし、この制度を利用できるのは、不動産賃貸等による不動産所得や物品販売業やサービス業などの事業所得などに赤字がある場合です。ただし、副業が、物品販売業やサービス業などで収入額が少額の場合や原稿執筆・セミナー講師などの一定の業務の場合は、事業とは認められないケースが多いです。税務署あてに「個人事業の開業届」を提出済みでも、事業の規模、継続性、従事の時間、事業のリスクなど業務の実態で判断されますので注意が必要です。副業が事業と認められない場合、その所得は雑所得とされ、赤字であっても、損益通算が利用できません。
(3)住民税の徴収方法
副業による収入金額を勤務先に知られたくない方も多いと思いますが、注意しないと勤務先に副業の収入金額を知られてしまいます。確定申告を行うと、その申告データが市町村等へ報告され、住民税額が決定されます。サラリーマンの方の場合、住民税は、原則として勤務先が給与天引きするため、勤務先あてに、住民税額のほか、副業による収入金額も含めた前年の収入金額等が通知されることとなります。これを回避したい場合は、確定申告で、「給与等以外の所得にかかる住民税の徴収方法」を選択する際に、「自分で納付」とすれば、給与等以外の副業の所得の収入金額は原則として勤務先に通知されません。この場合、副業分の所得に対する住民税額は、自宅に送付される納付書で納付することとなります。ただし、ふるさと納税によって減少する住民税額が副業の所得による住民税額を超える場合など一定の場合は、勤務先にすべての収入金額が通知されることとなりますのでご注意ください。