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ESSAY エッセイ
介護

3年に1度、介護保険制度は見直されます ー2021年度改正についてー

(公財)生命保険文化センター 編集子(R)

2000年4月からスタートした公的介護保険制度も今年度で22年目を迎えました。
公的介護保険は3年ごとに制度を見直すことになっており、今年度は改正の年に当たっています。
今回の主な改正点として、4月から介護報酬が引き上げられ、介護保険料も見直されました。また、8月からは現役並み所得者に対して、高額介護サービス費(自己負担の限度額を超えた部分が払い戻される制度)の上限が引き上げられます。

介護報酬が上がって、利用者の負担はどうなる?

介護報酬とは介護サービスを提供する事業者に支払われるもので、サービスごとに細かく点数化(1点あたり10円)されています。今回の改正により、介護報酬は全体で0.7%(うち0.05%は新型コロナウイルス感染症対策費)引き上げられ、更に2021年4~9月までの半年間は、新型コロナウイルス感染症対策としてすべての基本報酬に0.1%が上乗せされます。

点数が上がれば利用者の支払うサービス料も上がりますが、利用者は原則1割(65歳以上の一定以上所得者は所得によって2~3割)負担なので、負担割合に応じた分の値上がりになります。
例えば、「要介護2」の人がデイサービス(通所サービス)を8時間以上9時間未満で利用した場合、1回当たりの利用料(食事代は別)は3月までは7,790円、4月以降の基本報酬では7,870円で80円の値上げです。1割負担であれば8円の負担増です。仮に週3回・月13回利用すると、104円の負担増となります(標準的な例ですので、地域によって異なります)。

65歳以上の人が負担する保険料の基準額が変わりました。

65歳以上の人の介護保険料は市町村(東京23区は区)ごとに決まっていますが、各市町村では、改正のタイミングで保険料の基準額を見直します。
例えば、東京都では、今年度41区市町村が引上げ、4区市町村が引下げ、17区市町村は据置きとなり、都内平均は前期(2018~2020年度)比2.9%増となりました。全国平均はまだ出ていませんが(2021年4月時点)、要介護認定者数は毎年増加しており、介護報酬も上がっていますので、今期もプラスとなることが見込まれます。

介護保険料は市町村によって差があります。前期(2018~2020年度)で見てみると、基準額は月額で3,000~9,800円と幅があります(平均 5,869円)。そして、個人の保険料は基準額をもとに所得段階(標準的には9段階(※))に応じて決まります。例えば、第1段階では「基準額×0.3」、第9段階は「基準額×1.7」などとなります。
※市町村によっては10段階以上としたり、段階ごとの乗率を独自に設定したりしています。

現役並み所得の人は、高額介護サービス費の限度額が引き上げられます。

1カ月の介護保険サービス費の1~3割負担の合計額が限度額を超えた場合、超えた分が高額介護サービス費として申請により払い戻されます。同じ世帯に複数のサービス利用者がいる場合は、世帯で合算できます。現在、「本人または世帯全員が住民税課税者」の場合の限度額は、一律44,400円/月です。
2021年8月からは「現役並み所得者」の所得区分が見直され、課税所得が約380万円~690万円未満(年収約770万円~1,160万円未満)」の世帯の上限額は93,000円、課税所得が約690万円以上(年収約1,160万円以上)の世帯の上限額は140,100円となります。現役並み所得に該当する人にとっては、大きな改正と言えそうです。

・表1 高額介護サービス費の自己負担限度額

<現行>

収入要件 世帯の上限額
現役並み所得相当(年収約383万円以上) 44,400円

<見直し後>

収入要件 世帯の上限額
年収約1,160万円以上 140,100円
年収約770万円~約1,160万円未満 93,000円
年収約383万円~約770万円未満 44,400円(据置き)

この他にも、介護保険施設入所者の食費の負担軽減などについて見直しが行われます。低所得者の所得段階区分が細分化され、自己負担が増額になる人がいます。

社会保障費が増え続ける中、これからも応分の負担が求められます。生活設計を立てる際には介護費用のことも考えておく必要があるでしょう。団塊の世代(1947~1949年生まれ)の人がすべて75歳以上の後期高齢者になる「2025年問題」の年が間近に迫っています。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2025年の75歳以上人口は2,180万人で、全人口に占める割合は17.8%です。65歳以上人口をみても、3,677万人(30.0%)で、後期高齢者は今後も増え続け、介護保険を含む社会保障関係費の財政状況はより厳しくなることが予想されます。

・表2 高齢者人口と全人口に占める割合(将来推計)

  2020年 2025年 2055年
65歳以上人口
(割合)
3,619万人
(28.9%)
3,677万人
(30.0%)
3,704万人
(38.0%)
75歳以上人口
(割合)
1,872万人
(14.9%)
2,180万人
(17.8%)
2,446万人
(25.1%)

<生命保険文化センターが国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」2021年版の表2-9データをもとに作成>

一方、今回の改正では、「ケアマネジメントの利用者負担の導入」「利用者の自己負担割合の引上げ」「要介護1・2の人の生活援助の市町村(総合事業)への移行」「保険料負担年齢の引下げ」などの検討事項は先送りされました。次回、2024年の改正ではどうなるでしょうか。

現在は、新型コロナウイルス感染症の影響で介護サービスの利用を控える人が増えたり、消毒や換気など徹底した感染防止対策をしなければならなかったりなど、介護事業者の経営が厳しい状況がニュースになっています。介護報酬が上がった分は、介護人材の確保・介護現場の革新、制度の安定性・持続可能性の確保、感染症や災害への対応力強化などにあてられます。いずれにせよ、この感染症が早く収束することを願うばかりです。

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