「単独世帯」が約40%:高齢者の単独世帯の増加
ずいぶん前から周囲で老若男女を問わず一人暮らしが多いと感じていた。さらに最近は日常の買い物でも単身者に便利なものがかなり増えたと思っていたのだが、2020年の「国勢調査」による家族類型の推移を見て驚きつつも納得した。
同調査の一般世帯(注)を「単独世帯」、「夫婦のみ」、「夫婦と子供」、「男親と子供」、「女親と子供」、「その他の世帯」の家族類型でみると、「単独世帯」が38.1%で一番多くなっているのだ。「夫婦と子供」の世帯25.1%と、「男親と子供」の世帯1.3%、「女親と子供」の世帯7.7%を合わせた「親と子供」の世帯は34.1%で単独世帯より4%程度少ない。特筆すべきは「国勢調査」において、「単独世帯」の割合が「親と子供」世帯の割合を抜いたのはこの2020年の調査が初めてだということである。(図1)それだけ昨今の単独世帯の増加は著しい。
(注)「国勢調査」では1985年以降、世帯を「一般世帯」と「施設等の世帯」に区分している。
一般世帯とは、(ア)住居と生計を共にしている人の集まり又は一戸を構えて住んでいる単身者、(イ)上記の世帯と住居を共にし、別に生計を維持している間借りの単身者又は下宿屋などに下宿している単身者、(ウ)会社・団体・商店・官公庁などの寄宿舎、独身寮などに居住している単身者。一方、寮や寄宿舎で生活をする学生、病院、療養施設の入院者、老人ホームや児童養護施設などの社会施設の入所者は含まれない。
<総務省統計局「統計表で用いられる用語,分類の解説2」より>
一方、三世代同居などの「その他の親族世帯」の割合は「単独世帯」とは反対に減少を続けていて、2020年の調査では僅か6.8%。「女親と子供」世帯の7.7%より少ない。
<総務省統計局「国勢調査」(2005年および2020年)をもとに筆者作成>
単独世帯が増えている大きな要因は2つあると思われる。1つは未婚率の上昇により独身者が増加したことである。先の「国勢調査」(2020年)によると、45歳~49歳の未婚割合は男性29.9%、女性19.2%である。この未婚率も単独世帯割合も、いずれも1990年代から右肩上がりに増えている。(図1・図2)
<総務省統計局「国勢調査」(2020年)をもとに筆者作成>
そしてもう1つの要因は、「高齢者の単独世帯」が増えていることである。「国民生活基礎調査」(2022年)で65歳以上の者がいる世帯の世帯構造をみると、「夫婦のみの世帯」と「単独世帯」割合は増加傾向にあり、この2つを合わせると6割ほどとなる。一方「三世代同居」の割合はわずか7.1%、年々減少が続いてきた。(図3)
<厚生労働省「国民生活基礎調査」(2022年)をもとに筆者作成>
さらに同調査での「単独世帯」を男女別、65歳未満か65歳以上かでみると、1990年代後半以降は、「65歳以上の単独世帯」が増加していて、2019年には65歳未満と65歳以上の単独世帯の数はほぼ同じになり、その後はいずれも増加している。(図4)
高齢者のみの世帯が増えていることと、現在の未婚率の高さを考えあわせると、今後も一層65歳以上の単独世帯割合が増加することが予想される。
<厚生労働省「国民生活基礎調査」(2022年)をもとに筆者作成>
生活設計の考え方が広まった1970年代には、多くの人が20歳代で結婚し、子供を2人程度持ち、子供の誰かが高齢の親の世話をして、人生の大半を家族と一緒に生活していたのではなかろうか。それから50年あまり、未婚化・晩婚化は進み、離婚も増えている。高齢期は長期化し、誰とどこで過ごすのかなどを含めて家族との関わり方も変化している。
単独世帯は、特に生活のリスクという点では病気やケガ、事故など様々なリスクに遭遇した場合に一人で対処することが難しいことが少なくない。生活設計という観点からすると、ライフステージを、結婚、出産、住宅取得などのライフイベントによって区切るだけでなく、仕事や親の介護、自身の引退、高齢期などの出来事を経験するライフステージに、誰と生活をしているのか、単独で生活しているのか否かを意識し、それぞれのケースではどのようなリスクがあるのか、どのようなサポートがあるのかを検討し、必要であればシミュレーションをしておくことも重要になっているのではなかろうか。