「保険法」で、生命保険の契約はどうかわったの?
契約時期によって影響が異なります
2010(平成22)年4月1日に「保険法」が施行されました。この法律の規定は、原則施行の日以降に契約した生命保険に適用されます。ただし、一部の規定は施行の日より前に締結した保険契約にも適用されます。
2010(平成22)年4月以降に結んだ契約には、2010(平成22)年4月以降に主契約の更新を迎えた契約も含みます。
実際は、法律にもとづいて改訂・作成された約款によって契約上の具体的な権利や義務が定まります。
2010(平成22)年3月までに結んだ保険契約にも適用される主な事項
保険金・給付金等の支払時期
保険金・給付金などを請求した際に、生命保険会社は支払いに必要な事項の確認や、それに伴う特別な調査を行うことがあります。今回、約款には確認を必要とする具体的な場合ごとに、支払期限が明示されました。正当な理由なく期限後に支払われるときは、保険金などとあわせて一定の遅延利息が支払われます。
重大事由による解除
保険制度の健全な運営を維持するために、「保険金を得る目的で、故意に保険事故を起こした」などの重大な事由が生じた場合には、生命保険会社は保険契約を解除することができると保険法で規定されました。
これまでも、生命保険会社の約款で「重大事由による解除」として定められていましたが、「保険法」の内容にそって、より明確なものになりました。
保険金受取人による契約の存続
契約者の債権者などが保険契約を差し押さえて、債権の回収を目的に保険契約の解約を生命保険会社へ請求することがあります(例えば、国が税金の滞納処分をするなど)。解約されると保険契約は消滅し、その後の遺族等の生活保障機能が失われることになります。
このような場合、保険金受取人は契約者の同意を得て、1カ月以内(解約請求の通知が生命保険会社に到着した日の翌日から)に、解約返戻金相当額を債権者等へ支払うことによって、保険契約を存続させることができるようになりました。
2010(平成22)年4月以降に結んだ保険契約に適用される主な事項
保険料の返還について
保険料の払込方法が「半年払・年払」の場合、2010(平成22)年3月以前の契約では、解約などで保険契約が消滅したときには、未経過分の保険料は返還されませんでした。
2010(平成22)年4月以降の契約では、未経過の月数に対応する保険料相当額が契約者(保険金受け取りの場合は受取人)に返還されるようになりました。ただし、生命保険商品によっては、保険料相当額が返還されないものがあります。
なお、「一時払」の契約については、保険料の返還はありません。
遺言による保険金受取人の変更について
契約時に定めた保険金受取人の変更方法については、「遺言による方法」が加わりました。
遺言で保険金受取人を変更する場合は、(1)契約者が被保険者の同意を得ていること、(2)法律上有効な遺言であることなどが必要です。
生命保険会社に受取人変更の通知(遺言の場合、相続人が通知)が到着する前に、変更前の受取人に保険金が支払われた場合、そのあとに変更後の保険金受取人からの請求があっても保険金は支払われません。
告知義務違反について
生命保険を契約する際、契約者または被保険者は、保険金や給付金などの支払事由が発生する可能性に関する重要な事項のうち、書面または医師から口頭で求められた質問事項に対して告知する義務があります。故意または重大な過失で、このような事実を告知しないなどの場合には告知義務違反となり、生命保険会社はその契約を解除することができます。
ただし、営業職員などが事実の告知をしないことや、事実でないことを告知するよう勧めた場合などには、生命保険会社は契約を解除できないことが定められました。
被保険者からの契約者に対する解約の請求
契約者と被保険者が異なる場合に、重大事由に該当するときや、契約者との離婚によって、被保険者が契約申込みの同意をした際の事情が大きく変わったときなどに、被保険者が契約者に対して解約するよう請求することができるようになりました。
生命保険会社は、契約者あてに約款の改訂内容を送付したり、ホームページで公開するなどの対応をしています。また、2010(平成22)年4月以降に生命保険を契約する際の約款は、改訂後の内容になっています。
取扱いや手続きは、生命保険会社や保険商品ごとの約款によって異なりますのでよく確認しましょう。