新型コロナウイルス感染症と公的年金
令和2年に入って感染が急速に拡大した新型コロナウイルス(SARS‐CoV‐2)。重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)の原因となるウイルスと同じコロナウイルス科に属する病原体だそうです。これまで、その存在すらほとんど知られていませんでしたが、私達の生活に入り込み、社会・経済に大きな被害、影響をもたらしています。
新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、公的年金制度では次のような主な施策が講じられています。
1.新型コロナウイルス感染症の影響による減収を事由とする「国民年金保険料の免除・納付猶予」の臨時特例。
2.新型コロナウイルス感染症の影響による休業により、令和2年4月から7月までの間に給与が著しく低下した月が生じた場合の厚生年金保険料と健康保険料の改定(引き下げ)*1。
*1 保険料や年金・傷病手当金などの給付金の算定基礎となる「標準報酬月額」が2等級以上下がった月(低下した給与が支払われた月)の翌月分から令和2年8月分までの保険料が対象となります。なお、給与の低下から4ヵ月目に改訂されるのが、通常のルールです。
特例による改定の申請は被保険者の保険料負担軽減のために事業主が行うものですが、給付金の減額にもつながるため本人の同意が必要となっています。
3.障害年金受給者の「障害状態確認届(診断書)」提出期限の1年延長。
4.新型コロナウイルス感染症の影響による事業主の減収を事由とする「厚生年金保険料の納付猶予」。
上記「1」の「国民年金保険料の免除・納付猶予」については、ご本人がアクションを起こす(申請を行う)必要があります。通常は、住所地の市区町村役場の国民年金担当窓口または年金事務所へ年金手帳や印鑑などを持参して手続きを行いますが、臨時特例申請については感染防止のため、できる限り郵送での手続きが求められています。
臨時特例による国民年金保険料の「免除・納付猶予*2」は、令和2年2月以降の保険料が対象で、令和2年2月以降の新型コロナウイルス感染症の影響による収入の減少状況「当年中の所得(世帯合計)の見込額*3」を基準にして行うものとなっています*4。なお、この他に令和2年2月以降の保険料が対象となる「学生納付特例(当年中の所得(世帯合計)の見込額*3が「半額免除」以下の場合)」についても、臨時特例が行われています。
*2 (1) 保険料の免除には、当年中の所得(世帯合計)見込額*3により、従来と同様「全額免除」「4分の3免除」「半額免除」「4分の1免除」の4区分があります。
(2)納付猶予の対象となる人。
・50歳未満で、本人および配偶者の当年中の所得(世帯合計)見込額*3が保険料全額免除基準と同じ人。なお、保険料全額免除の場合は本人・配偶者のほか、世帯主の所得も審査対象となります。
*3 納付猶予の対象となる人。
全額免除 | 「(扶養親族等の人数+1)×35万円+22万円」以下 | 半額免除 | 「扶養親族等控除額+社会保険料控除額等+118万円」以下 |
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4分の3免除 | 「扶養親族等控除額+社会保険料控除額等+78万円」以下 | 4分の1免除 | 「扶養親族等控除額+社会保険料控除額等+158万円」以下 |
ただし、国民年金保険料の免除・納付猶予の期間については、老齢基礎年金を受給するための「受給資格期間(120ヵ月)」には算入されますが、年金額が減ることになりますので、注意*5が必要です。なお、障害基礎年金・遺族基礎年金は減額されません。
*5 保険料免除・納付猶予された期間について、本来の納付期限から10年以内であれば遡って納付(追納)ができ、年金を減らさないようにすることができます(免除・猶予を受けた翌年度か翌々年度に納付する場合は当時の保険料のままですが、3年度目以降の場合は加算金がプラスされます)。