成年年齢引下げから1年が経った今、改めて必要な消費者教育とは?(1)
2022年4月から始まった18歳成人。高等学校3年生の誕生日を迎えた生徒から、親権者の同意なく自らの判断でクレジットカードやローン契約ができるなど、「責任の主体」に変わっていくことで、トラブルが急増するのではないかと懸念されました。
では、実際はどうだったのでしょうか。2023年5月に独立行政法人国民生活センターが公表した18歳または19歳の相談件数は9,907件(2022年度)。具体事例としては、脱毛エステや医療サービスといった「美しくなりたい」という願望にまつわるトラブルや、「お金を儲けたい」という願望にまつわる副業関連のトラブルなどが見られました。特に、脱毛エステに関しては、特定事業者の倒産や返金遅延トラブルに関する相談が増加する傾向にありました。
この件数をどう見ればよいのでしょうか。前年よりは増えたものの、毎年1万件前後の相談が寄せられていることから例年並みという見方もできます。最近ではSNSなどを通じたネット関連のトラブルが多く、被害にあっても公的な機関に相談していない可能性も高いため、この数字のみでは実態が判断しづらい側面もあります。今後も注視していく必要があるでしょう。
<独立行政法人国民生活センターホームページ「18歳・19歳の消費者トラブルの状況-成年年齢引下げから1年-」一部抜粋>
次に、消費者教育の側面から見ていきましょう。
成年年齢の引下げを迎えるにあたり、高等学校では、18歳になる前の高校1年生または高校2年生の家庭科で消費者教育を履修することになりました。また、消費者庁をはじめとする関係省庁は2018年度から2020年度の3年間を集中強化期間とし、全国の高校生に教材「社会への扉」を配布し、成人前の準備教育を促しました。
表1は集中強化期間の前後にあたる2016年と2021年に、公益財団法人消費者教育支援センターと公益財団法人生命保険文化センターが、全国の高校生約3,000人に実施した調査結果です。「コンビニでお菓子を買うことは契約である(〇)」「ネットショッピングはクーリング・オフできる(×)」の正答率が特に上昇していることからも、契約に関する基本的な知識の正答率が上がっていることがわかります。この内容は、小学校から段階的に学習するよう位置付けられているので、今後さらなる知識理解度の向上が期待されるところです。
<公益財団法人消費者教育支援センター・公益財団法人生命保険文化センター「高校生の消費生活と生活設計に関する調査報告書」一部抜粋>
では、成人する前までに行う消費者教育は、知識理解度が高くなれば十分なのでしょうか。
次回は成年年齢引下げが行われて1年経った今、改めて必要な消費者教育について述べたいと思います。