株式投資にかかわる確定申告
2024(令和6)年1月から新NISA制度が始まり、株式や投資信託への投資の関心が高まっています。また、新NISAの開始を見据え、昨年中に保有する株式や投資信託を売却された方も多いと思います。株式投資等にかかわる税金は、特定口座の源泉徴収のみとお考えの方も多いですが、確定申告による対応でケースによっては節税ができることもあります。また、見落としやすいポイントもありますので、再度確認するとよいと思います。なお、記載の内容は課税口座である「特定口座」や「一般口座」の取引に関するものであり、新旧NISA口座で取引した上場株式等については対象外となります。
1.上場株式等の譲渡損失がある場合
上場株式等につき証券会社等を通じて譲渡したことなどにより生じた譲渡損失の金額は、特定口座(源泉徴収あり)の場合、その口座内で上場株式等の配当等と相殺される損益通算が行われ、結果として配当等の源泉徴収税が減少します。また、特定口座と一般口座がある場合は、確定申告することで、特定口座と一般口座間でも譲渡損益や配当等を相殺する損益通算が可能です。そして、損益通算してもなお控除しきれない損失の金額については、その年分の翌年以後3年間、確定申告することで、上場株式等に係る譲渡所得等および配当所得等の金額から繰越控除することができます。
なお、特定口座内で、配当等と譲渡損失が損益通算されている場合に、譲渡損失の申告をするときは、その配当等も申告が必要となりますが、その課税方法は総合課税または申告分離課税のいずれの方法も選択できます。総合課税を選択した場合、配当所得につき配当控除という控除制度が適用できますので、申告分離課税を選択した場合より節税となるケースがあります。比較したうえで申告するとよいです。ただし、申告する配当所得は全て同一の課税方法とする必要があります。
また、複数の特定口座(源泉徴収あり)がある場合、それぞれの口座ごとに申告不要制度を選択することができますので、例えば、配当所得は株式の譲渡損失が生じた口座のみを申告し、他の口座分は申告不要とすることも可能です。
ただし、2022(令和4)年分の確定申告まで、上場株式等の配当等や株式譲渡所得について、所得税と個人住民税の課税方式を異なる方法とすることができましたが、2023(令和5)年分からは一致させることとなりました。そのため、確定申告で総合課税または申告分離課税の適用を受ける申告書を提出した場合は、地方税の総所得金額等にこれらの金額が算入されることとなり、地方税や国民健康保険料(税)等に影響が出る可能性があります。
2.配当所得
上場株式等の配当等は、原則として源泉徴収税のみ課税され、確定申告不要とすることができます。ただし、確定申告不要制度を選択した配当等については、配当控除という控除制度の対象とはならず、その配当等からの源泉徴収税額も納付税額の計算上控除することはできません。一方、確定申告する場合は、前述のとおり総合課税または申告分離課税を選択することができ、総合課税を選択したときは、配当控除という控除制度を利用したり、その配当等からの源泉徴収税額を納付税額の計算上控除したりすることができます。ただし、配当等以外の所得の金額により、総合課税を選択すると不利となるケースもありますので、ご注意ください。
また、海外の証券会社に預けている外国上場株式で外国の証券市場で売買されているものも「上場株式等」に含まれます。したがって、それらの配当等は、総合課税のほか申告分離課税の選択ができ、また上場株式等に係る譲渡損失の損益通算の対象となります。ただし、法律の登録を受けていない金融取引業者にて行う取引はこれらの対象外ですので注意が必要です。なお、外国上場株式の配当等は、配当控除制度の対象とはなりませんが、一定の要件により海外で源泉徴収された税額を控除できる外国税額控除制度が適用できます。