世帯規模の経済性と家計費~世帯の小規模化が家計費に及ぼす影響~
世帯の小規模化
少子化や親世代との同居の減少、また、非婚化や高齢化を背景に単身世帯が増加し、1世帯当たりの人員は減少してきました。総務省統計局「国勢調査」によると、1980年には一般世帯の1世帯当たりの人員は3.22人でしたが、2000年には2.67人、2020年には2.21人と「世帯の小規模化」が進行中です。今回は、世帯の小規模化が家計費にどのような影響を及ぼすかについて考えてみたいと思います。
同じ規格の商品を大量に生産すると1個当たりのコストが下がる現象を「規模の経済性」といいますが、家計も同様に、小家族よりも大家族のほうが1人当たりに換算した場合の家計費を節約できることがあります。
世帯規模別の1人当たりの消費支出
総務省統計局「家計調査」(勤労者世帯)から、世帯人員別(注)に1人当たりの消費支出(生活費)を見ていきましょう。
(注)所得や世帯主の年齢など、世帯人員以外の条件が異なる。
2023年の1人当たり1か月間の消費支出は、1人世帯182,114円、2人世帯では145,744円、3人世帯109,828円、・・・6人以上(平均6.19人)の世帯では55,706円と世帯人員が増えるにつれて、少なくなることがわかります。(図1)
図1 世帯人員別1人当たり1か月間の消費支出(勤労者世帯)
<総務省統計局「家計調査」(2023年)をもとに筆者作成>
消費支出の中でも家賃や地代のように家族が共同で消費するものの支出金額は、世帯人員数に対して比例的に増加していくわけではありません。光熱・水道費なども同様に、世帯人員が2人から3人に増えたからと言って、光熱・水道費が2倍3倍にはならず、世帯人員数が多くなるほど1人当たりの支出金額は少なくすむこともあります。もちろん、交通費や教養娯楽のように世帯規模の効果がみられないものもありますが、消費支出全体としては、世帯規模が拡大するにつれて「規模の経済性」により支出金額の増加は抑制されていきます。
世帯規模別の1人当たりの食料費
次に、消費支出の中でも最も基本的な食料費について見ていきましょう。(図2)
図2 世帯人員別1人当たり1か月間の食料費と食の外部化率(勤労者世帯)
<総務省統計局「家計調査」(2023年)をもとに筆者作成>
(注)1人世帯の外食費には賄い費を含む。
2023年の1人当たり1か月間の食料費は、1人世帯43,617円、2人世帯では36,801円、3人世帯28,107円、・・・6人以上(平均6.19人)の世帯では17,616円と世帯人員が増えるにつれて少なくなります。
食料費の内容を消費形態別に見ると、内食(うちしょく)(食材を購入し、家庭内で調理されたものを家庭内で食べる)、中食(なかしょく)(弁当・総菜など、家庭外で調理されたものを家庭内や職場などで食べる)、外食(飲食店で調理されたものを、その場で食べる)に分類できます。世帯規模の効果が働きやすいのは内食で、働きにくいのが中食・外食です。
食の外部化率(食料費に占める中食と外食の割合)をみると、1人世帯が52.2%、2人世帯が34.0%、3人世帯33.9%、・・・6人以上(平均6.19人)31.2%となっています。
中食や外食は簡単で楽ですが、最近の食料品の物価高騰でかさむ食料費を少しでも節約したい場合には、たとえ単身や小規模世帯であっても、まとめ買いやまとめ調理をして小分けに保存し消費していくなど、「規模の経済性」を働かせる工夫も有効な対策かもしれません。
長い人生の間には、独身の時期、結婚し家族を形成・拡大する時期、子どもの独立などにより世帯人員数が増減することもあり、それにともない家計費も変動します。「規模の経済性」を働かせて家計費を節約するなど、世帯人員数に応じて柔軟に家計管理を行っていきましょう。