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ESSAY エッセイ
生活情報

食品の栄養と経済との関係

神戸女子大学家政学部教授 ガンガ 伸子

最近は様々な食料品の価格が高騰し、毎日の献立を考えるのに頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。生鮮野菜などは天候の影響を受け、価格が大きく変動します。また、私たちの食生活の多くは海外からの輸入に頼っているため、円安により様々な食品の価格が上昇しますし、エネルギー価格の高騰や地政学的リスクなどの影響も受けます。

総務省統計局「家計調査」(2023年)によると、2人以上の世帯のエンゲル係数(生活費に占める食料費の割合)は27.8%を占め、食料費は生活において重要で基本的な支出と言えます。日々の食料費はさほど多くなくても、「塵も積もれば山となる」で、長い目で見ると家計管理に大きな違いをもたらします。

献立を立てるときに、どの食品を選ぶかは人それぞれの好みもあると思いますが、全体的に見ると、食品の栄養と経済の間には一定の法則性があります。経済が発展し、人々の所得水準が上昇すると、食料消費においては、安価なでんぷん質の多い食品(米やいも類など)が減少し、代わりに高価な動物性食品(肉類や乳製品など)の消費が増加します。わが国では、1960年代の高度経済成長期に顕著に見られた食生活の変化です。

いくつかの食品を例に、100kcal摂取するのにいくらお金をかけているかを表すカロリー単価(2023年)をみてみましょう。

 食品別カロリー単価(2023年)

米のカロリー単価は11円で、さつまいも36円やじゃがいも52円といった「いも類」よりも安価なため、米は経済的に合理的な食品と言えます。一方、牛肉は142円で上表の食品の中で最もカロリー単価の高い食品であり、米の約13倍になります。豚肉と鶏肉はともに71円で、牛肉の半分のカロリー単価です。動物性食品の中では卵が31円と安く、「物価の優等生」とも言われます。最近、卵の価格が高騰しましたが、それでも肉類と比べると安価にエネルギーを摂取できる食品と言えます。このように、同じ100kcal摂るのに、食品によってかかるコストに大きな開きがあります。

もちろん、献立を立てる際にはエネルギーだけでなく、炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラルなどの栄養バランスをとることが重要です。食料費を削ることだけを優先すると、栄養バランスが崩れ、健康に悪影響が出る可能性があります。食生活の質を保ちながら合理的に食料費を節約する方法として、カロリー単価を参考に、安価で栄養バランスのとれた献立を立ててみてはいかがでしょうか。

プロフィール

ガンガ 伸子(がんが のぶこ)

長崎大学教育学部教授を経て、2016年より神戸女子大学家政学部教授。
奈良女子大学大学院家政学研究科(修士課程)生活経営学専攻修了。博士(農学)。
専門は、食料経済学、生活経済学(家計費分析)。