「機能性表示食品」の現状と課題について~紅麹事件を踏まえて~
消費生活相談においては、ここ数年、インターネット通販の定期購入トラブルが多発しており、取引のあり方について問題視されていますが、その取引対象の多くは機能性表示食品を含む健康食品です。そのような中、ある会社の「紅麹」の成分が含まれた健康食品を巡って、腎臓の病気を発症するなどの被害が発生しました。消費者庁では、「機能性表示食品を巡る検討会」が発足され、「機能性表示食品を巡る検討会報告書」に基づいて、食品表示基準の改正など新たな施策がとられつつあります。そこで今回は、機能性表示食品の現状と課題についてご紹介します。
健康への関心の高まりを受け、市場には様々な健康食品が出回っています。あくまでも食品ですから機能性の表示はできませんが、例外的に国が定めた基準などに従って食品の機能が表示できる食品があります。これを『保健機能食品』といい、「特定保健用食品(以下、トクホ)」「栄養機能食品」「機能性表示食品」の3種類があります。
機能性表示食品制度は、機能性を分かりやすく表示した商品の選択肢を増やし、消費者が商品の正しい情報を得て選択できるよう、2015(平成27)年4月に始まりました。トクホとは異なり、国の審査や消費者庁長官の許可は必要ありません。販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報などを消費者庁長官へ届け出て、事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品です。今では非常に多くの機能性表示食品が販売され、広告宣伝では機能性がクローズアップされています。消費者からは医薬品のような効果があると期待され、手軽に健康が維持できるものとして高い関心をもたれています。実際に、富士経済グループの調査(2023年3月)によると、機能性表示食品の2023(令和5)年市場規模は約6,000億円、中でもサプリメント形状のものは約2,300億円と予測されました。
次に「機能性表示食品」の課題について考えてみました。
- 錠剤・カプセル状のサプリメント形状は、特定の成分が抽出・凝縮されており、長期間にわたって毎日摂取し続けるため、過剰摂取につながります。通常の食品に比べ、リスクが高いと思われるため、サプリメントに関する規制の検討が望まれます。
- 健康食品のGMP(適正製造規範)は医薬品に比べ緩いと思われます。今回の紅麹事件を踏まえ、原料の受け入れから最終製品の出荷までの全工程において、安全性を確保できるように、より厳格化されたGMPが望まれます。
- GMP(適正製造規範)とは、原材料の受け入れから製造、出荷まで全ての過程において、製品が「安全」に作られ、「一定の品質」が保たれるようにするための製造工程管理基準のことです。(厚生労働省ホームページより抜粋)
- インターネット上の広告に関しては、機能性をアピールするために「言い切り型」の表示や最終製品の臨床試験でいかにも効果があったようなデータがグラフで示されていたなどの問題点が見えてきたため、景品表示法、健康増進法で優良誤認、虚偽誇大広告の取り締まり強化が課題です。
- トクホが生活習慣病を防ぐ目的で創設され、ヒト試験を行って製品自体の機能性と安全性を国が審査しているのに対して、機能性表示食品は関与成分の文献調査のみを根拠として届け出ることが可能です。そのため、国が機能性と安全性の審査をしていないことなど、健康食品を利用する際の注意点について、消費者への周知・啓発が求められます。
●最後に
健康食品を適切に選ぶためには、保健機能食品である3つの種類(トクホ、栄養機能食品、機能性表示食品)の違いをしっかりと理解することが重要です。保健機能食品であっても効果を期待しすぎず、あくまでも『バランスの取れた食生活』を大切にしましょう。利用する場合は、生活習慣を見直すきっかけと考えていただきたいと思います。