契約と消費生活
授業概要
◇授業校 | 東京都葛飾区立水元中学校 |
◇実施日時 | 2021年12月15日(水) 第3校時 10:50~11:40 |
◇授業者 | 東野 茂樹 先生(社会科) |
◇対象 | 3年1組(38名) |
◇授業タイトル | 契約と消費生活 |
ねらい
経済活動についての理解や考察を基に、経済活動の担い手として主体的に社会に関わろうとする生徒を育てることをねらいとする。
「民主政治と政治参加」をすでに学習したうえで、本単元につなげている。「民主政治と政治参加」では選挙権年齢が18歳以上となったことにも触れ、主権者として政治に参加する意義や、判断には責任が伴うことなどを学習している。
本単元では、生命保険文化センター副教材「『成年』になるということ」を活用し、消費生活における契約や成年による契約に伴う責任について考えさせる。
授業で利用したプリント
授業写真
授業の流れ
<導入>10分
時間 | 学習形態 | 学習活動(授業の流れ) | 指導上の留意点 | |
0:00 | 一斉講義 | (先生) | 昨日は自分たちの欲しいものとその値段を調べてもらいました。また、電子マネー、クレジットカードなど、いろいろな支払い方法がありました。クレジットカードについては、買い物をした後いつ支払うのかということを学習しました。 今日は、私たち消費者が消費するうえで気を付けることについて考えます。 まず、教科書p.133に載っている塾の広告、同じものをプリントにも載せましたが、この広告から見ていきましょう。 もう12月半ばです。毎日塾通いに追われている人もいるでしょう。プリントの最初の問いは「あなたは塾に行っていますか?」です。もちろんどちらでもよいのですが、塾に通っている人は、なぜその塾を選んだのか、塾に通っていない人は、どんな塾なら行ってみたいかを簡単に書いてください。 |
通っていない生徒は、仮定で考えさせる。 |
4:00 | 個人ワーク | (生徒) | プリントに記入する。 | |
(先生) | はい、それは自分のメモとして後で考える際の材料にしてもらいます。 では先ほどの広告を見てください。このような塾のチラシが入っていたとします。みなさんは消費者ですから、塾という「サービス」を買う立場です。この塾のチラシを見て、どういう部分に工夫があるか、どこに注目したのか、目についたことを、プリントの「消費者の関心を引く工夫はどれか」に書き出してください。 |
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5:30 | 個人ワーク | (生徒) | プリントに記入する。 | |
一斉講義 | (先生) | では、周りの席の4人で「自分はここに注目した、その理由」を紹介し合ってください。 | ||
7:30 | グループワーク | (生徒) | 塾の広告で注目した点とその理由を紹介し合う。 | |
8:30 | 一斉講義 | (先生) | 話し合いをやめて、聞いてみましょう。どんなところでもいいので自分はここに注目したというのを紹介してください。 | |
(生徒1) | 「個別指導」です。 | |||
(先生) | 個別指導!大きく書いてあるよね。個別指導に注目した人、どれくらいいますか。 | |||
(生徒) | 何人かが挙手する。 | |||
(先生) | もう少し聞いてみましょう。 | |||
(生徒2) | 「合格実績」のところです。 | |||
(先生) | なるほど。「信頼の合格実績」とありますね。人によって他にもいろいろあると思います。 では次に、目の厳しい消費者になってもらいたいので、このチラシに“突っ込み”を入れてください。つまり、気を付けなくてはいけないところです。プリントの「消費者が気を付けるべきところはどこか」に書き出してください。 |
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9:00 | 個人ワーク | (生徒) | プリントに記入する。 | |
一斉講義 | (先生) | では同じように周りの人と情報交換しましょう。 | ||
グループワーク | (生徒) | 周りの席の4人で紹介し合う。 | ||
一斉講義 | (先生) | 気を付けるべき点を聞いてみましょう。 | ||
(生徒3) | 合格実績が割合ではないことです | |||
(先生) |
そうですね。100人中23人合格したのか、500人中23人だったのか、25人中23人だったのかで全然違います。もしかしたら10年間の累計で23人かもしれない。数は事実だとしても、その数が何を意味するのかはわかりません。いいですね、厳しい指摘です。 | |||
(生徒4) | 本当にこの通りなのかわからない。合格実績も、本当にその人数が合格しているのかわかりません。 | |||
(先生) | データを改ざんしているかもしれないということですね。それはまずいですね、でもわかりませんね。 | |||
(生徒5) | 他の塾と比べないと何とも言えない。 | |||
(先生) | 確かに。他と見比べないとわからないですね。他に何かありますか。 | |||
(生徒6) | 料金がわからない。 | |||
(先生) | そうですね、こんなすごい塾なのだから毎月10万円と言われたらどうしましょう。それもありえます。他には? | |||
(生徒7) | 個別指導なのに、2人いる。 | |||
(先生) | そうなんです。「安心のマン・ツー・マン方式」とあるのに、絵は生徒が2人います。集団の授業なのでは?と思いますよね。他にもあるんですよ。「今すぐ伸ばすコース」とか、他は伸びないのか?と突っ込みたくなります。「他塾で伸びなかった生徒の成績アップを目指します!」とありますが、「目指しているだけ」かもしれません。でも、この広告はウソは言っていないのかもしれません。個別指導にしても、「その瞬間はマン・ツー・マンです」ということかもしれませんが、気を付けることはたくさんあるということです。 |
<展開1>消費者主権と消費者問題について 20分
時間 | 学習形態 | 学習活動(授業の流れ) | 指導上の留意点 | |
10:30 | 一斉講義 | (先生) | 私たちは「消費者」です。自分の意志と判断によって決めなくてはいけない。広告は全部ウソだから騙されるなと言っているわけではありません。広告は正しくても、自分で判断をすることが大切です。自分で考えて判断し行動すること、政治でもやりました「主権」です。消費者の主権なので「消費者主権」といわれ、私たちはそれを目指していかなくてはいけません。 判断はしないといけないが、判断するには広告などに書いてあることが頼りです。そして自分たちもしっかり考えないと間違ってしまうかもしれないし、「思っていたのとは違う」ということにもなりかねません。情報に頼りつつも判断することが私たちには求められています。 私たち消費者は「買い手」です。買い手には責任が伴います。自分たちが買うのだから、自分たちが判断して、買った結果には責任を負うということになります。 ただし、大事なのは、「売り手」に情報をきちんと出してもらうことです。勘違いを狙ったような情報を出されると困るわけです。良い情報も悪い情報もきちんと出してください、となります。 情報を隠されることで私たちが損をすることがあり、実際にそのような問題が起こっています。「消費者問題」といいます。私たち消費者が損をする、被害を受ける、そのような問題が実際にあるということです。 では、それをどうしたら防げるでしょうか。そこで出てくるのが国や地方公共団体です。消費者が正しい情報を得られるようにするために、消費者の権利が保障される必要があります。 実際の例を見ながら考えましょう。「廃棄カツ問題」の記事を見てください。カレーのチェーン店が、賞味期限切れなどの理由で提供できなくなった冷凍カツを廃棄することにしました。業者に廃棄を依頼したのですが、その業者はそれを廃棄せずスーパーに売ったため、60万枚もの廃棄カツが流通してしまいました。 食材偽装など問題のある食品を私たちは気づかずに食べていた可能性があったということです。なぜこんなことが起こるのか。私たちはなぜ気づくことができず、問題のある食品が店頭に並んでしまうのか。考えて、書いてみてください。 |
身近にふれられる事例を挙げながら考察させる。 |
24:00 | 個人ワーク | (生徒) | プリントに記入する。 | |
一斉講義 | (先生) | では発表してもらいましょう。 | ||
(生徒8) | 売り手が偽っているから | |||
(先生) | そうですね、売り手が偽って売っているからです。スーパーに売った業者は廃棄されるべき食品であることを伏せて売っているわけです。そんなことをされたら私たちはその情報をつかむことはできません。知らずに買ってしまうということが起こります。 これを、難しい用語なので覚えなくてもいいのですが「情報の非対称性」といいます。売り手は良い情報も悪い情報もいっぱい持っています。それを全部、買い手が知っていれば判断できますが、売り手が情報を少なく提供し、悪い情報が手に入らなければ、知らずに買ってしまうこともあります。「知っていたら買わなかったのに」ということが起こるのです。情報にずれがあると、買い手が損をしたり被害を受ける「消費者問題」が起こります。 次に、食品表示の図を見てください。これはお菓子の表示で、原材料が細かく示され、アレルギー物質も載っています。製造者名や問合せ先の電話番号もあります。では、なぜアレルギー物質や食品添加物、遺伝子組み換え食品などの表示は義務づけられているのでしょうか。さきほどの「カツ」の問題も思い出しながら、その理由を消費者の立場で考えてみてください。 |
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29:00 | 個人ワーク | (生徒) | プリントに記入する。 | |
一斉講義 | (先生) | では表示されていなかったらどんなことが起こりうるか、周りの人と出し合ってみましょう。 | ||
30:00 | グループワーク | (生徒) | 周りの席の4人で話し合う。 | |
一斉講義 | (先生) | では聞いてみましょう | ||
(生徒9) | 知らないで食べてアレルギーを発症してしまうことがあります。 | |||
(先生) | そうですね。摂りたくないものを知らずに摂取してしまい、健康被害が起こる可能性があります。知っていれば選べますが、知らないと何も選べなくなってしまうかもしれません。表示されていることで、摂りたくないものを選ばないという判断ができます。 ポイントは、これが法律で定められていることです。政治のところでやりましたが、法律で定めるとは何か。それは私たちの望みです。私たちの代表者が決めています。私たちが望むから法律になっていく。法律で縛ることで、情報を隠すことは許さないということを実現していることになります。その上で納得ができれば買えばよい、ということです。 |
<展開2>契約と消費生活について 15分
時間 | 学習形態 | 学習活動(授業の流れ) | 指導上の留意点 | |
31:30 | 一斉講義 | (先生) | 情報があり、売る側・買う側のお互いが合意できれば、買うことになります。私たちは買う意志があり、値段に納得して、情報から判断して買うと決める。売る側も、この値段なら売るという意志があり、売ることを納得している。そこに合意が生まれます。これを「契約」といいます。 みなさんは、契約というと書類を交わしたり判子を押したりするイメージがあるかもしれません。それももちろん契約ですが、売り手と買い手が合意をすることは全部契約です。みなさんも昨日、契約したのではないですか。コンビニでジュースを買う、これも契約です。100円でジュースを買うことに納得できなければ契約不成立です。だから、契約はするもしないも自由であり、このことを「契約自由の原則」といいます。納得できれば買えばいいし、納得できなければ買わなければいいということです。 ここで前回、調べてもらった「あなたが今一番欲しいもの」の中で一番高価なものを書いてください。値段はメモしていますか?値段も書いてください。 |
商品の検索や購入が容易であることに気づかせ、契約の責任と関連付けさせる。 |
38:30 | 個人ワーク | (生徒) | プリントに記入する。 | |
一斉講義 | (先生) |
はい、それを手に入れるのに、いい話があります。それは18歳から成年になるという話です。みなさんは3年後、大人になります。成年になれば契約に親の同意は不要です。資料がありますので画面を見てください。 確認します。成年になると、さまざま な契約が親の同意なしでもできます。今、みなさんが書いた欲しいものも18歳であれば自分で契約できます。高価なスマホもバイクもローンを組むことが可能です。ただし、契約の一方的な取り消しはできません。 未成年者が勝手に契約をしたときは、「未成年者取り消し」によって取り消すことができます。しかし18歳で成年になると、自分で責任を負うことになりますから取り消しはできないということが起こります。親の同意がなくても契約ができることは、本当にいいことばかりなのでしょうか。
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45:00 | 個人ワーク | (生徒) | プリントに記入する。 | |
一斉講義 | (先生) | では周りの4人で自分はこれが危ないと思うことを話し合いましょう。 | ||
グループワーク | (先生) | 周りの席の生徒と話し合う。 |
<まとめ>3分
時間 | 学習形態 | 学習活動(授業の流れ) | 指導上の留意点 | |
47:00 | 一斉講義 | (先生) | どんなことがあり得ますか、発表してもらいましょう。 | 商品の購入を含めた契約には責任が伴うことに気づかせる。 |
(生徒10) | 自己破産してしまう。 | |||
(先生) | そうですね。お金が払えなくてどうしようもなくなることがあるかもしれません。時間が少なくなりましたが、「まとめ」のところ、私たちは消費者としてどんなことに気を付けないといけないかを書いておいてください。 |