中学校・高校家庭科授業実践報告「リスクや保険を身近に感じる指導方法の工夫」
本日は、「リスクや保険を身近に感じる指導方法の工夫」と題して授業実践報告をさせていただきますが、まず最初に、私が本日この場でお話させていただく理由について3点お話します。
1つは、日本損害保険協会や生命保険文化センターの教材作成に関わってきました。それが1点目です。
2点目に、その教材が教育現場の中でどのように活用できるのかということを損保・生保の方とTT授業(ティームティーチング授業)を行いながら、検証の視点も含めながら授業を進めています。
もう1点は、本校は附属中学校を併設しており、中学校・高校ともに家庭科を教えています。中・高の実践を先生方に報告できる、というこの大きな3つの理由から、お話をさせていただくことになりました。
レジュメを見ていただくとわかるように、計5つの授業実践を報告しますが、時間が限られているため、内容が多少上滑りするかもしれませんので、ご容赦ください。今回用意したスライドは、授業の流れがわかる範囲で、一部抜粋したものになっています。なお、今回発表させていただく実践内容は、昨年度実施したものとなります。
本日の報告タイトルとして「リスクや保険を身近に感じる指導方法の工夫」と書かせていただいていましたが、日頃より、できる限り生徒に身近な出来事を提示することで、生徒自身に考えさせて、その内容が生活に結び付けられるような指導方法を考えています。サブタイトルは、TT授業を行うことで、損保・生保さんからそれぞれの専門的な知識や客観的なデータを示してもらえますので、より深みのある授業を行うことができるといった意味でこのサブタイトルを付けさせていただきました。
損害保険に関する実践報告:日本損害保険協会とのTT授業
中学2年生(技術家庭 家庭分野)「住まいの安全対策・災害への備え」
まず、「災害とその対策を身近に感じ考える指導方法の工夫」ということで、損害保険から説明からさせていただきます。
日本損害保険協会作成の「安全な住まい 災害への備え」教員用手引きに、先生ご自身で授業を実施する際の参考になるよう学習指導案を付けています。本日提示する指導案はTT授業の内容として作成したものです。ワークシートは日本損害保険協会が作られたものを活用しています。
進め方ですが、まず初めに災害というのを身近に感じさせるところから、近年起こった災害を写真で説明します。
これは大阪の高槻で起こった地震です。京都と高槻というのは位置的に近いところにありますので、生徒に「こういう大きい地震もあったよね」と思い出させながら災害について考えさせることを導入として利用しています。
また、実際に自然災害も色々な災害がありますので、そこは混同しないように説明しています。
次にハザードマップです。これは色々なところで作られて配布されていますが、まずハザードマップは何かという確認のため、説明をしています。日本損害保険協会が作られた「動画で学ぼう!ハザードマップ」も視聴させます。今は中学・高校ともにタブレットを活用することが推進されていますので、各自視聴させるのも一つの方法かなと思います。
洛北高校・附属中学校の西側に賀茂川という大きな川があります。一旦災害が起こると氾濫する危険性がありますので、大変なことになる可能性があることを話していきます。
次は地震についてです。京都はあまり大きな地震は起こっていませんが、「もし京都で大きい地震が起こるとすれば、亀岡断層や洛北高校の東側にある花折断層が影響する可能性があると言われているよ」と言うと、生徒にはグッと「気を付けないと」という意識が高まってきます。
「備えあれば、憂いなし」ということで、注意報や警報、避難勧告などが出たときに、「避難をして損をした」じゃなくて、「避難したけど何もなくて良かった」と感じる・考えることが大事だと認識させるようにしています。
次は家の中の安全対策についてです。自分の家のことを想像しながら、どういうところに気を付ければ良いと考えさせます。このスライドの部屋ではわかりにくいのですが、キャスター付きのテーブルとイスがすごく怖いんですね。地震の揺れとともに、このイスが勝手に走り出してケガをするということが実際に起きていますので、そういうことも含めて生徒には説明をしています。
これは実際に本校で避難訓練をした時の様子です。「すくーとん」という教材を非常用持ち出し袋兼防災頭巾を作っており、これを被って避難訓練をした様子を説明しています。
次に、災害用伝言ダイヤルの利用方法です。とても大事なことなので、これも併せて説明します。
地域とのつながりも災害が起きた時には大事だということを説明しています。本校では、高校の生徒会が地域にある児童館に来ている小学校3~4年生の子供たちと一緒に防災マップを作る取り組みをしており、その内容を紹介しています。ただ、ここ2年ほどコロナ禍でできていないのですが、こういう取り組みをしながら、地域とのつながりも大事にしてきたことなどを説明しています。
また、京都府立高校の家政科において、このような「サバイバルクッキング」というものを作っていることを紹介し、みんな色々なところで取り組んでいることを説明しています。
次に、家族で防災会議をすることが大切なことを説明しています。併せて自助・共助が大事で、自分を守ることがまず一番だけど、次に、中学生の力というのはすごい大きなパワーを持っているわけだから、それを家族や地域の中で活かしていくことが大事だということを認識させたいと思っています。
この写真は京都の町家が並ぶ細い路地ですが、自分がこういう所にいた時に災害が起きたらどうするか考えさせています。なかなか車が通れないところで高齢者の方がいたら、若い中学生たちが負ぶって運んであげられるとか、そういうことも考えさせます。
次に、保険の話に入っていきます。特に、やはり日本は地震が多いので、この地震保険がとても大事だということを強調します。
それから、実際に京都の人たちはどれくらい地震保険に加入しているのか説明します。私自身も地震保険に加入していますが、生徒にも地震保険に入っているか家で聞いてみたらと話しています。備えることはとても大切で京都も年々地震保険の加入者が増えていることをデータで示しています。
授業を通して、生徒からの感想には、「家に帰ったら家具の固定など確認したい」「「すくーとん」や靴をベッドのそばに置くようにする」といった感想があり、学習したことが家庭生活の中に活かされていると感じています。特に、「避難した時の集合場所を家族で確認しようと思う」という感想は、すごく大事なことだと生徒に伝えました。それぞれ家族が違う場所にいても、最終的に何かあったらここに集まろう、ということを確認しておくだけですごく安心なので、ぜひ家族と相談しておくといいね、と生徒に伝えています。実際に家でこういう話をしたと、後日話してくれる生徒も少なくありません。以上、中学2年生の損害保険に関する実践報告でした。
高校1年生(家庭基礎)「消費行動と環境・災害から身を守る」
高校1年生でも同じように、高校生向けの資料を使って、損害保険について授業を行っています。中学生と内容が重複しているところが多くありますが、高校生目線で説明しているものもありますので、参考にしていただければと思います。
ここは中学生の場合と同じような導入です。身近な災害ということで、平成30年の関西空港への連絡橋が台風による被害で全く通れなくなり、滑走路も水浸しになった話をします。身近な事例から考えさせるよう、他の災害の写真も利用しています。ハザードマップや京都市防災マップの水災害編・地震編は中学生向けに説明したものと同じものを使用しています。
それから、これは高校生目線の説明になりますが、高校生になると、本当に色々なところから通学しています。もしも学校から自宅に帰る時に地震が発生したら、どうするかという話です。電車やバスに乗って通学する生徒や歩いて通学している生徒もいます。公共交通機関を利用している生徒が、もし利用できなくなったらどうするかを考えさせます。帰るまでの途中に親戚の家や知人の家があれば、頼ることができる。しかしなかった場合はどうするかというところですが、クラスに自転車通学をしている生徒、あるいは徒歩で通学している生徒がいますので、そういう生徒に手を挙げさせて、「今手を挙げた人の顔をしっかり覚えて、何かあったときはお願いね、と今から頼んでおきなさいよ」と言っています。そういうことで生徒は「本当に何かあったときには助けてもらおう、助けてあげよう。」という意識が芽生えていくものだと、そのときによく思います。
ここからはちょっと内容は変わりますが、自分の命は自分で守るということで、災害が起こった場合にどう対応できるかという、より家庭科的な目線で話をしていきます。これはペットボトルにお米を日頃から詰めておいて、それに対してこれだけのお水を利用すれば炊けるということを、実物を見せて説明しています。「なるほど」と、生徒がよく頷くところです。切り干し大根とツナの缶詰については、火や水を使わなくても調理ができるという一つの例として紹介しています。また、皆さんもよく知っての通り、乾パンやフリーズドライの話もします。
そして最後に、洗濯について。洗濯機がないと洗濯できないと思っている生徒がいます。洗濯機がない中で、桶がなくてもビニール袋を利用すれば洗えるんだということを説明しています。袋を使いながら少量の水と少量の洗剤を使って、洗い・濯ぎ・脱水ができ、手でグッと押したり足で踏んだりするという話をしています。これらのことを説明すると、「こういう話を聞けて良かった」と感想に書く生徒が多いです。あと、これに加えて「裁縫セットも絶対用意しておかないといけないよ」とも言っています。
保険の話については、中学生よりも高校生に対して詳しく説明しています。やがては親元を離れて一人暮らしする生徒、家庭を持つ生徒もおりますので、そういうことを意識しながら説明していきます。また、火災保険と地震保険は保障の内容が異なりますので、違いなどについて説明しています。
特に地震保険は、政府と保険会社が共同で運営しているため、保険料が少なくて済んでいるという点等を具体的に話していくと、生徒にとって非常にわかりやすいと思います。
中学生には「自助・共助」、高校生には「自助・共助・公助」について説明をしています。その際に公助は基本的には頼りにせず、まずは自助・共助という観点から、日頃からどのように備えて、どう地域の方と関わっていくのか。特に地域の方とは挨拶をしたり、ちょっとした言葉を交わしたり、顔をお互いに知っておくだけで何かあったときには全く異なることを強調しながら話をしています。
生徒が学年末に書いた感想では、「防災について学び、家具を固定してみた」「洗濯の仕方や料理方法等がわかってよかった」などがありました。特に、「家庭でも災害時について話す機会ができ、家族でより一層災害について考えたり、防災の意識が高まった」と書いている生徒が結構多かったです。しっかりと取り組んでよかったなと納得・安心しました。
損害保険については以上です。日本損害保険協会が色々とスライドを作成してくださり、わかりやすい教材になっています。先生方も是非お使いになられてもいいのではないかと思います。
生命保険に関する実践報告:生命保険文化センターとのTT授業
中学2年生(技術家庭 家庭分野)「人生におけるリスクとその備え」
続いて、生命保険文化センターとのTT授業について紹介させていただきます。
まずは、中学校2年生を対象とした実践報告です。私が生命保険文化センターの教材作成に携わっておりますので、作成されたPowerPointスライド教材の内容がいかに授業で活用できるか検証の観点も含めながら授業をしました。使用した資料は、生命保険文化センター作成のPowerPointスライド教材「リスクに備える」です。
まず、「将来について考えてみよう」ということで、これからどんなことが起こるのか、人生のことをちょっと考えさせてみることから始めていきます。
そして、実際に人生にはこのようなイベントがあり、色々とお金がかかることについて説明します。生活設計を考えるということは、実はお金がかかることでもあるんだよと説明していきます。
次に、人生を考えていく中で、残念ながらリスクという「起きてほしくないこと」が起きると、その場合もお金がかかることが多いということを説明します。
そして、普段の生活の中でどんなリスクが起こりうるのか、またそのリスクに対してどんな対策が考えられるか話し合わせます。
このように4人のグループで討議を行い、タブレットを使って意見を提出させました。各グループから提出された意見を画面に投影し、生命保険文化センターの講師に解説をしてもらっています。
リスクについて考えていく中で、リスクに備える手段として、国などが扱っている「公的保障」や足りない部分を自分で考えて補完する「私的保障」があることを簡潔に説明していきます。例えば、公的保障として社会保険に健康保険や公的年金があることについても説明を加えます。そして、私的保障の一手段として、民間保険とは何か説明するときには、少し話が難しくなってきますので、「保険のしくみ」のスライドを使いながら、「こういう風にみんなでお金を出し合って保険は成り立っているんだよ」と生徒に説明しています。また、民間保険の種類として生命保険と損害保険があることについても触れていきます。
それから、どれくらいの家族が生命保険を契約しているか、クイズ形式で生徒に考えさせます。答えはCの約90%ですが、ここでもICT活用として、タブレットを使って生徒に回答させました。この写真は、その回答をグラフ化して提示しているところです。
実際に中学2年生に対して保険の話を進めていると、少し内容が重たい感じが出てくるケースがあるので、タブレットを使って意見を提出させたり、グループワークを取り入れて、みんなで意見を述べ合ったりすると、いい意味でメリハリが付いて、スムーズに授業が進められたと思っています。
最後に、私が外部から講師を呼んだときは、必ず代表者として家庭科係の生徒に、自分の言葉で感想を述べてお礼を言ってもらうようにしています。そうすることで、その授業の内容がどのように生徒に伝わったか、どれくらい理解できたか等がよくわかります。
生徒の感想としては、「保険にも社会保険と民間保険があって、その中にも様々な種類があるので、必要に応じて入る保険を考えたりして、リスクに備えられるように勉強することが大切だと思った」「すべての民間保険に入るのではなく、他の費用などもしっかり考えて、選ぶことが大事になることが分かった」など、色々考えているということがわかりました。
引き続き、中学3年生に入っていきます。
中学3年生(技術家庭 家庭分野)「契約の重さとリスクへの備え」
タブレットを使い、グループ討議でリスクについて考えるところを中学2年生と同じ内容にしてみました。2年生と3年生で回答に違いがあるか検証したかったのが理由です。資料は生命保険文化センターが作成したPowerPointスライド教材「「成年」になるということ」をベースにした資料を利用しています。成年年齢が引き下げられたということは、18歳から、より行動に責任が伴いますので、リスク管理についてもしっかりと考えることが大切だということを伝えていきます。
こちらは導入になります。「18歳でできること・できないこと」や「トラブルに巻き込まれない」の内容は消費者教育の内容に関わってきます。この内容は、本校では中学2年生で学習済みなので、振り返りとして説明しています。
ここから本題の展開に入って行きます。中学2年生と同じ発問でグループ討議をさせ、同じくタブレットで意見を提出させました。中学2年生と同様に、各グループから提出された意見を画面に投影し、生命保険文化センターの講師に解説をしてもらっています。中学2年生から出た意見と大きな違いはありませんでした。
実際に自転車事故を起こした場合どうなるのか、事例を挙げながら、本当に大変なことであり、かつ、他人ごとではないということを認識させています。
そして、リスクに備える手段として、中学2年生と同様、国などが扱っている「公的保障」や足りない部分を自分で考えて補完する「私的保障」について、民間保険の種類として「生命保険」と「損害保険」について説明します。
そして、「預貯金」と「民間保険」の特徴やメリット・デメリットを確認したあとに、実際にこのように大ケガをして足を骨折してしまい入院した場合に必要となるお金から、公的保険として健康保険で保障されるお金を差し引いて、不足した部分が出たときに何で補うか考えさせるようにしています。
ここからは生命保険の契約について消費者教育の目線で進めて行きます。18歳になったら生命保険も契約できる。そのためには何が大事なのか、契約という視点から説明していきます。生命保険もクーリング・オフができる商品があることについても確認します。
生徒の感想として、「身の回りには多くのリスクが隠れていて、自分が加害者にも被害者にもなり得ることがわかった。気を付けたい。」というものがありました。このようなことに気付いてくれることも、とても大きいことだと思います。それから、「備える目的にあわせて民間保険を選択していくことが大切だと思った。また必要となる金額と公的な保障との差額を埋めるためにも、貯蓄をしておくことも大事だと思った。」とあり、ここまで考えてくれると十分なのかなと思います。貯蓄も大事だということも含めて、理解できたように思っています。
中学2・3年生あるいは高校1年生で本スライドを使うのも一つの方法かと思います。また色々参考にしていただけたらありがたく思います。
高校1年生(家庭基礎)「リスクに対する社会保障と私的保障」
最後になりますが、高校1年生の実践報告として「リスクに対する社会保障と私的保障」について説明させていただきます。
実は、保険について、どうすれば生徒に身近なこととして考えさせることができるんだろうかと考えた結果、ロープレを導入することにしました。「こんなところで保険というものが大事になってくるんだ」とわかるような形で組み入れました。もう10年以上保険について授業を進めていますが、今回ちょうど生命保険文化センターで作成したPowerPointスライド教材ができたので、組み合わせながら授業を実施しました。生命保険文化センター作成の冊子「君とみらいとライフプラン」も使いながら、教科書も併用しながら進めています。
保険のところは単独で扱っても意味をなさないと考え、人生設計と絡めて教えていきます。人生にはライフステージごとに課題がありますので、その課題を押さえることによって、老後の生活費の問題や保険の問題について考えさせることができます。そして、家庭経済の面から、生活費・教育費について各自生徒に実際に計算させています。生きていくためにはこれだけお金がかかるということを計算させると、生徒は教育費の多さに本当にびっくりします。「教育というのは財産なので、親はそういうつもりであなたたちにお金をかけてくれているんだよ」という言葉も添えていきます。それから、収入と支出の分類、給与明細表の見方、給与明細表では社会保険のこととして社会保険料が関連してきます。そして正規雇用・非正規雇用の違いについても触れ、保険の話に入っていきます。
教育費については、生徒たちが計算したものとはまた別に平均的なデータも示していきます。また、洛北は、高校卒業後は大学に進学する生徒がほとんどですが、大学と専門学校の違いについてもデータを使いながら説明します。大学で文系・理系によっても教育費が変わってくるのは何故かといったことも投げかけながら進めていきます。
給与明細の見方では特に社会保険料のところをしっかりと押さえていきます。それから、正規雇用と非正規雇用の違いも説明します。親が「安定した職についてね」とよく言うのはこの正規雇用のことですが、ではなぜそのように正規雇用を求められるのかというところをこの表から説明します。また、「自分の人生を考えるうえで、正規雇用がいいけれど、小説家になりたいとか漫画家になりたいなど、時間を上手に活用したいと思うと正規雇用で1日8時間きちんと働くとすると、そういうことができない場合もあるから、そこは柔軟に考えることも一つだ」という言い方をしています。ここでは全く頭から非正規雇用を否定することはしないようにしています。
日本には社会保障制度があって、その中の一つが社会保険だということをまず押さえます。そして、社会保険には5つの種類があるので、これを今から学ぼうと説明します。公的年金保険のところでは、自営業・学生は国民年金に加入することになるが、会社員や公務員、専業主婦(夫)はどうなるのかなど、公的年金の基本的なところも説明を加えて行きます。
高齢者は65歳になって退職した後、どうやって生活をしていくのか説明して行きます。年金には老齢年金だけではなく、障害年金・遺族年金があることもしっかりと押さえます。65歳にならなくても保険料を払っていれば、障害年金・遺族年金をもらうことができることがあるということも説明します。ここのところは結構落としがちです。そして、学生納付特例制度についても触れます。20歳になったら年金の保険料を払わなければいけないですが、学生であった場合に「保険料の支払いが難しい場合には、学生納付特例制度というのがあるので、これをしっかりと知っておきなさいね」と伝えます。「自分から申請しないと誰も手を差し伸べてくれないから、こういう制度を覚えて、自分で活用できるようにしましょう。」ということを常々言っています。
生涯収入と生涯支出について、足りない部分があった場合に退職後どのようにして補うか考えておく必要がありますので、その点についても触れます。
次に、最初に説明したとおり、どうしたら保険というものを身近に考えさせられるか考え、ロープレをさせるようにしました。このロープレは、クラスで上手に演技できる生徒を家庭科係に考えてもらい、家庭科係から依頼してもらいます。
1つ目のロープレは、大学を卒業してから久々に仲良しグループが雪山でスキーをしていると、その最中に一人が怪我をしてしまうという設定です。「正社員で働いているから社会保険には入っているけど、生命保険は入っているかな?」というところで話が終わります。ここから生徒に「このリスクに対して、何をどう考えていったらいいのか?」ということをワークシートに書かせて、意見発表をさせています。
2つ目のロープレは、一家の大黒柱が亡くなってしまったという内容ですが、実際にそのような生徒・家庭もあるので必ず配慮しながら行います。
3つ目のロープレは、同窓会で何年か振りに同級生に会った場面です。一人は独身、一人は結婚しているけれども子供がいない、もう二人は結婚して子供がいるというように、家庭の状況が異なります。そこで、「高校の時に家庭科で保険のことを習ったよね」というところから「今の自分たちにはどのような保険が必要なのかな」ということを話している場面です。こちらのロープレは生徒たちが自分たちで考えて、自分たちで保険の種類を挙げていく、という流れになっています。
次に、保険の種類という面から、それぞれ「自分にとって必要な保険」を選ぶことが大事だと説明します。例えば独身生活をずっと続ける人は老後や介護の保障が大事になってくるし、結婚して子供がいる場合、その子供にお金を残したいから死亡の保障も考えるということで、より具体的にその選択肢について考えさせるようにしています。
そして、生命保険と損害保険の説明をした後、「預貯金」と、「民間保険」の違いを説明しますが、実はここで「資産形成」の話を入れています。当然、預貯金は大切で、保険に入ることも大事だけど、それ以外の方法として「お金があればの話」ですが、「資産運用」も考えられると説明します。財形とか株とか、そこにはメリットもあればデメリットもあるということも少しだけ説明しています。
そして授業の最後に講師へ家庭科係が挨拶をします。今回挨拶をしたのは、ロープレを行った生徒ですが、「自分がロープレをすることによって、保険の意味というのがとてもよく分かった」と話していました。
生徒の感想としては、「ロープレから保険のことについて考えたことが、とても分かりやすかった」「バランスを考えながらリスクマネジメントをしていきたい」というものが書かれていました。「投資などを駆使して手持ちのお金を増やして不測の事態に備えて、老後の資金もコツコツ確保していきたい」という感想もあり、こちらが伝えたかったことをそれなりに消化してくれているように思います。
ロープレメンバーは、私からお願いするのではなくて、家庭科係がクラスの中で演技が上手そうな生徒に頼んで配役を決めています。それで、みんなが見ていないところで練習をして、本番、パッとみんなの前でやる。それがロープレを演じる生徒たちの成就感やプライドにつながります。そして大事なことは、そのロープレが終わった後に、必ず評価をすることです。やりっぱなしで終わらせるのではなくて、私も「上手だったね」と伝えますし、講師の方からも一言いただくようにお願いしています。
このようにして、生徒と生命保険文化センターの講師とともに作り上げてきた授業の報告を以上で終わらせていただきます。