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仕事(就労)

短時間労働者の厚生年金適用について知りたい

一定要件を満たす短時間労働者は適用対象

正社員と非正規社員間の社会保障制度の格差解消を目的として、パートタイマーなど短時間労働者に対する厚生年金の適用範囲が段階的に拡大されました。厚生年金の被保険者になる短時間労働者が増え、これらの人は厚生年金保険料を負担するとともに将来の厚生年金の受給につながります。

適用拡大の考え方

  • 被用者でありながら被用者保険の恩恵を受けられなかった非正規社員のセーフティネットを強化することで、社会保障制度における「格差」を是正すること
  • 多様な働き方を支える社会保障制度に見直すことで、特に女性の就業意欲を促進し今後の人口減少社会に備えること

適用拡大のこれまでの経緯

厚生年金の被保険者となる短時間労働者 1週間の所定労働時間かつ1カ月間の所定労働日数が正社員の4分の3以上(概ね週30時間以上)に該当する人。  
2016(平成28)年10月以降 上記に該当しなくとも、①週労働時間20時間以上、②月額賃金8.8万円以上、③勤務期間1年以上見込み、④学生は適用除外、⑤従業員501人以上の企業、という5つの要件をすべて満たせば、厚生年金の被保険者となる。
2017(平成29)年4月以降 500人以下の企業で、労使の合意に基づき、企業単位で短時間労働者への適用拡大を行うことが可能となる。
2022(令和4)年10月以降 上記5要件のうち、③勤務期間1年以上見込みの要件が撤廃され(フルタイムと同じ2カ月超になる)、⑤企業規模要件が501人以上から101人以上規模に引下げとなる。
2024(令和6)年10月以降 上記5要件のうち、⑤企業規模要件が101人以上から51人以上規模に引下げとなる。

厚生年金の適用範囲(2024(令和6)年10月以降)

適用対象となる短時間労働者の要件は、次の(A)または(B)となります。

(A)1週間の所定労働時間かつ1カ月間の所定労働日数が正社員の4分の3以上(概ね週30時間以上)

(B)上記(A)を満たさない短時間労働者の場合、①~⑤を全て満たす人。

 ① 週20時間以上の労働時間
 ② 月額賃金8.8万円以上
 ③ 2カ月を超える雇用の見込みがある
 ④ 学生ではない
 ⑤ 従業員数51人以上の企業※

※従業員数50人以下の企業についても、労働者・使用者間の合意(労働者の2分の1以上と事業主による社会保険加入についての合意)にもとづいて手続きがあれば、⑤にあてはまることになっています。
なお、国や地方公共団体に勤める短時間労働者は、勤め先の従業員数にかかわらず⑤にあてはまることになっています。

公的年金の仕組み上、会社員や公務員などの被扶養配偶者(20歳以上60歳未満)は、国民年金保険料の負担なしに老齢基礎年金などを受給できる第3号被保険者となります。ただし、被扶養配偶者の条件となっている年収130万円未満(60歳以上は180万円未満)を満たしていても、短時間労働者として働いて厚生年金の適用範囲にあてはまると、厚生年金の被保険者であることが優先されて第2号被保険者となります。

なお、基本的に厚生年金と健康保険の適用範囲はセットです。適用拡大により厚生年金の被保険者になる短時間労働者は、健康保険の被保険者にもなります(健康保険の被扶養者でなくなります)。

年収の壁・支援強化パッケージ(2023(令和5)年10月1日~)

人手不足への対応として、短時間労働者が「年収の壁」を意識せず働くことができる環境づくりを支援するための施策です。

① 年収106万円(月額賃金8.8万円)の壁への対応

【社会保険適用促進手当】

社会保険適用促進手当は、2023(令和5)年10月1日以降、新たに第2号被保険者になった短時間労働者であって標準報酬月額が10.4万円以下の人を対象に事業主から支給される手当です(社会保険料の本人負担分を事業主が負担)
また、社会保険適用に伴い新たに発生した本人負担分の保険料相当額を上限に最大2年間、保険料算定の基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の算定に考慮しない取扱いとなります。手当の支給によって保険料算定の基礎となる標準報酬月額・標準賞与額が上がることを防ぎ、労使双方の保険料負担が軽減されます。労働者には将来の年金が手厚くなるメリットがあります。

なお、事業所内での労働者間の公平性を考慮し、同じ条件で働く既に(2023(令和5)年9月以前に)社会保険が適用されている他の労働者にも、事業主が同水準の手当を特例的に支給する場合には、同様に保険料算定の基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の算定に考慮しない措置の対象となります。

※社会保険適用促進手当は、あくまでも事業主が労働者に対し、労働者の保険料負担を軽減するために自らの判断で支給するものであり、新たに社会保険の適用となった場合でも事業主の判断によっては社会保険適用促進手当が支給されないことも考えられます。

② 年収130万円の壁への対応

従業員50人以下の企業で働く第3号被保険者は、年収が130万円以上になると第1号被保険者となり、新たに国民年金保険料・国民健康保険料の負担が生じるものの、年金給付は変わりません。
対応策として、一時的に収入見込額が130万円以上となる場合は、「人手不足による労働時間延長などに伴う一時的な収入変動である旨の事業主の証明書」により、引き続き被扶養者にとどまれるようになります。ただし、連続2回までが上限となります。
今回の措置はあくまでも「一時的な事情」として収入変動に係る認定を行うことから、被扶養者の収入確認を年1回実施していることを想定し、「連続2回」は、連続する2年間の各年における収入確認について事業主の証明を用いることができることとしています。収入確認が年1回と異なる保険者(健康保険組合等)もありますので詳しくは加入している健康保険組合等に確認しましょう(被扶養者に該当するかどうかは加入している健康保険組合等の判断になります)。

以上の対応策は「当面の対応」で、2025(令和7)年に予定している次期年金制度改正の内容を踏まえて、抜本的な制度の見直しについて検討することになっています。