公益財団法人 生命保険文化センター

メニュー
閉じる

公益財団法人 生命保険文化センター

X youtube
生活基盤の安定を図る生活設計
相続

死亡保険金に相続税がかかる場合の具体例は?

保険金を受け取った場合の税金

生命保険を契約するとき、誰が保険料を支払い(契約者)、誰が保険の対象となり(被保険者)、誰が保険金を受け取るか(保険金受取人)によって、受け取る保険金は、相続税・贈与税・所得税(+住民税)のいずれかの課税対象となります。
ここでは、「死亡保険金」に相続税がかかるケースを具体例で見てみましょう。

参考:「受け取るとき、税金はどうなる? 」のページへ

<事例>死亡保険金に相続税がかかる場合

契約者(保険料負担者)であり、被保険者でもある夫が死亡し、死亡保険金5,000万円を、保険金受取人である妻が受け取りました。この保険金のほかに相続する財産が1億7,000万円あり、その財産は妻1億3,000万円、2人の子供(2人とも20歳以上)がそれぞれ2,000万円ずつ受け取りました。

なお、借入金の残り300万円、葬式代200万円、計500万円を保険金から支払いました。
この場合の税金はどうなるでしょうか?

契約者(保険料負担者)
被保険者
死亡保険金受取人

下矢印

保険料負担者である被保険者(夫)が死亡した場合、その死亡保険金は相続税の課税対象となります。
受け取った死亡保険金5,000万円は、「みなし相続財産」として、遺産の総額に含められます。ただし、この契約形態の場合は、「死亡保険金の非課税」という税制上の特典があります。

死亡保険金の非課税金額

死亡保険金は、「残された家族の生活保障」という大切な目的を持っていますので、一定の死亡保険金が非課税とされています。相続人が保険金を受け取る場合に限り、「500万円 × 法定相続人数」が非課税金額となります。

死亡保険金の非課税金額

注:非課税金額計算上の法定相続人数には相続を放棄した者も含まれます。

この事例では子供が相続放棄しても、妻が受け取る死亡保険金から1,500万円を控除できます。しかし、相続放棄したのが妻(死亡保険金受取人)の場合、妻には非課税金額が適用されません。

実際に相続税額を計算してみましょう

STEP1:課税価格の計算

(単位:万円)
 合計
相続財産 13,000 2,000 2,000 17,000
死亡保険金
非課税金額
5,000
△1,500
3,500
債務控除
葬式費用
△300
△200
△500
課税価格 16,000 2,000 2,000 20,000

債務控除

  • 被相続人(死亡した人)に返済すべき債務があれば、遺産の総額から差し引きます。借入金元利、地代家賃の滞納分、住宅ローンの残額などが該当します。ただし、住宅ローンの残額があっても、団体信用生命保険で清算される場合は対象外です。
  • 所得税などの未納分も債務として控除できます。

葬式費用

  • 相続人が負担したお通夜、告別式の費用は、遺産の総額から控除できます。
  • 墓石や墓地、初七日の費用などは対象外です。

債務控除、葬式費用

STEP2:課税遺産総額の計算(基礎控除額を差し引きます)

「3,000万円+600万円 ×法定相続人数」が基礎控除額となります。

STEP2:課税遺産総額の計算(基礎控除額を差し引きます)

STEP3:相続税の総額の計算

課税遺産総額を法定相続分どおりに相続したと仮定して計算します。

(1) 法定相続分に応じた仮の取得金額(法定相続分についてはこちら)

  法定相続分に応じた仮の取得金額

(2) 仮の取得金額にもとづく相続税の総額

 仮の取得金額にもとづく相続税の総額

<参考>相続税の税額速算表
●計算方法:税額=(A)×(B)-(C)

各法定相続人の取得金額(A)税率(B)速算控除額(C)
1,000万円以下 10% 0万円
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
10,000万円以下 30% 700万円
20,000万円以下 40% 1,700万円
30,000万円以下 45% 2,700万円
60,000万円以下 50% 4,200万円
60,000万円超 55% 7,200万円

税額速算表の見方

例えば法定相続人の取得金額3,000万円の場合、税率は15%、速算控除額は50万円です。
3,000万円を少しでも超えると、税率は20%、速算控除額は200万円となります。

STEP4:各人が納付すべき相続税額の計算

相続税の総額を実際に相続した割合で按分します。

(1) 各人の算出税額

(1) 各人の算出税額

配偶者の税額軽減

  • 配偶者の相続税額から、次の算式で計算した額が控除されます。

配偶者の税額軽減

したがって、配偶者については1億6,000万円までは実質非課税であり、1億6,000万円を超えていても、法定相続分の範囲内であれば非課税となります。

(2) 配偶者の税額軽減

配偶者の税額軽減

(3) 納付税額

この結果、相続税として税務署に納付する税額は、

 納付税額

となります。この場合、配偶者である妻は相続税を納めなくてよく、子供2人が、それぞれ270万円ずつ、計540万円の相続税を納めればいいわけです。なお、子供が18歳未満の場合は、「未成年者控除」も受けられます。また、このほかに、「障害者控除」、「贈与税額控除」などがあります。

注:遺産相続をした者が配偶者および一親等の血族(子および父母)以外のときは、算出税額に2割を加算します。

税額控除(税額から控除する金額)

未成年者控除

法定相続人(相続放棄者も含む)が未成年者の場合は、その人が満18歳に達するまでの年数1年につき10万円の税額控除があります。
未成年者の控除額が、その未成年者本人の相続税額より大きく全額控除できない場合は、控除できない分の金額をその未成年者の扶養義務者(配偶者、直系血族および兄弟姉妹のほか、3親等内の親族のうち一定の者)の相続税額から控除できます。

※年数の計算に当たり、1年未満の期間があるときは切り上げて1年として計算します。

障害者控除

法定相続人(相続放棄者も含む)が障害者の場合は、その人が満85歳に達するまでの年数1年につき10万円(特別障害者の場合は20万円)の税額控除があります。
障害者の控除額が、その障害者本人の相続税額より大きく全額控除できない場合は、控除できない分の金額をその障害者の扶養義務者(配偶者、直系血族および兄弟姉妹のほか、3親等内の親族のうち一定の者)の相続税額から控除できます。

※年数の計算に当たり、1年未満の期間があるときは切り上げて1年として計算します。

贈与税額控除

相続等により財産を取得した人が、被相続人から相続開始前7年以内に贈与(暦年課税)を受けた場合は、その贈与を受けた財産は相続税の課税価格に加算されます(相続開始前3年超7年以内の贈与については総額100万円までは加算されせん)が、その財産についてすでに課税された贈与税の金額は控除します。

※2023(令和5)年12月31日以前の贈与の場合は、相続開始前3年以内。

相次相続控除

10年以内に2回以上相続がありいずれも相続税が課された場合、前の相続税額の一部を後の相続税額から控除できます。適用できるのは相続人に限ります。

あなたへおすすめのページ

小冊子『知っておきたい 生命保険と税金の知識』もご活用ください。

生命保険に関する税金について、ぜひ知っておきたい事柄を11の事例をあげてそれぞれの課税額の計算の仕方を詳しく解説しています。

小冊子のご案内はこちらから